最適設計が効果を生むだろうと思われる分野です。(その3)(オプティワークス推測)
環境配慮スチール缶を育成
(東洋製缶)
環境配慮スチール缶を育成
ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルの普及に押され気味の缶容器市場の中で、東洋製缶が1991年に開発した「タルク缶」が好調にシェアを伸ばしている。タルク缶は、製品工程での廃棄物や消費エネルジーを大幅に削減できる環境配慮型製品である。
工程なくし負荷軽減
従来のスチール缶の工程はまず鋼板を大量の潤滑油を投入して円筒状に加工し、成型後に5千万缶当たり9千立方メートル強という大量の水を使って潤滑油を洗い流した。缶の表面に耐食性を持たせるため、塗料を塗布し焼き付ける工程を計3回繰り返していた。
タルク缶の場合、表面をポリエステルフィルムでラミネートした鋼板を使用する。樹脂が潤滑油の役割を果たすため、潤滑油を使わず、洗浄工程も塗装・焼き付け工程も要らない。3つの工程削除が大幅な環境負荷軽減につながった。
排水を処理する際に発生する固形廃棄物がゼロになるので、廃棄物総量は、5千万缶当たり40トンから120キログラムに激減した。工程の削減でラインの長さが3分の1以下になり、製缶時間は、53分から12分に縮まった。工場からの二酸化炭素排出量は3分の1。塗料に混入したスズもなくなり、リサイクルにも適している。環境の追い風に乗ったタルク缶だが、2つの「難関」がある。1つはビール業界だ。「ビール業界には、アルミ缶でなくてはならないという根強い神話がある。」スチール缶は独特のにおいが残るというのが神話の理由だ。
タルク缶はにおいの元とされる塗料を使用しないので、実際はほとんど心配はないという。しかし、アルミ缶の優位は崩せず、酒類向け出荷数は、清涼飲料向けの100分の1以下の20万ケース(1ケース24缶入り)にとどまっている。
もうひとつの難関は、「デザイン」だ。同社はタルク缶の鋼板をさらに薄肉化するため、95年に缶の胴体部分に航空宇宙技術を応用したダイヤ型の凹凸を成型して強度を増した「ダイヤカット缶」を投入した。容量200グラムの缶の重量は通常のスチール缶より3割軽い22.3グラム。既存のタルク缶と比べても2割軽、普及を狙った画期的な資源省資源技術だ。
デザイン配慮が課題
しかし、「通常のタルク缶より値を下げているのに、ほとんど採用されていない。」胴体に印刷するロゴのデザインがみえにくくなるためだ。
20年前にも、当時のスチール缶を薄肉化するために、胴体を波状に成型する缶が開発されたが、デザイン上の理由で、普及しなかった。飲料製品にとってデザインは、味とともに売り上げに直結する商品の生命線だ。「デザインか環境か」という選択に、デザインに軍配が上がるのは、20年前から変わらない。
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コンプレッサー(圧縮機)消費電力2割減
(東芝キャリア)
消費電力2割減
騒音・容積は半分
らせん状ローラー採用
東芝と子会社でエアコン専業の東芝キャリアは、省エネ、低騒音で家電の小型化を可能にする新世代のコンプレッサー(圧縮機)を開発した。らせん状の特殊樹脂を巻き付けたローラーがシリンダー内で回転して空気を圧縮・排出する仕組み。従来に比べて消費電力を20%、容積を50%削減できるという。
改正省エネ法などの環境規制をを背景に省エネは家電の商品競争力を左右する。東芝は冷蔵庫、エアコンに新型コンプレッサーを採用し、家電の省エネ競争を有利に展開する。
開発した「ヘリカル(らせん状)コンプレッサー」は、高強度で柔軟性もある樹脂をらせん状に巻きつけたアルミニウム製ローラーをシリンダー内で回転させる。ローラーの回転に伴い、空気が入り込むらせんのすき間に入った空気を徐々に圧縮し、絞り出すように高圧で排出する。
レシプロ式やロータリー式はピストンがシリンダー内の空気を圧縮するため、弁の騒音や振動の抑制に限界がある。
ヘリカル式は排水弁がなく、振動が少ない。部品点数が少ない。圧縮効率が良いなどの特徴があり、従来のコンプレッサーの欠点を解消。省エネ、低振動、小型化可能にする。
ヘリカル式は省エネ性で注目されていたが、強度と柔軟性を両立させる樹脂開発が難しかった。東芝はフッ素樹脂をベースに200種類以上の補強材を試験した結果、新しい特殊樹脂を開発した。
東芝はまずヘリカルコンプレッサーを採用したホテル・病院向け低騒音冷蔵庫を商品化、10月16日に発表する。家庭用冷蔵庫、ルームエアコンも順次、ヘリカル式に切り替える。
次世代の燃料電池開発 沈黙トヨタと一線画す
(本田技研工業)
次世代の燃料電池開発
ホンダ、あえて情報公開
業界標準へムード醸成
沈黙トヨタと一線画す
本田技研工業が、燃料電池車(FCEV)の開発で先行するといわれたトヨタ自動車が沈黙を保つ中、本田はは情報公開を積極化することで技術の標準化に役立てようとの狙いのようだ。
報道陣向けに試乗会
栃木県宇都宮市郊外にある本田の新車開発拠点、本田技術研究所。
「ガソリン車と比べ、そんなに違和感はないね」。報道人から次世代の仕上がり具合いに驚きの声が上がった。
FCEVは燃料電池システム内で水素と酸素が反応して電気を起こし、モーターで自動車を動かす仕組み。排出されるのは水だけで、地球温暖化につながるとされる二酸化炭素や窒素酸化物や一酸化炭素など有害物質はゼロ。究極のクリーンカーといわれる由縁だ。
航続距離は2倍
新たに補助電源としてウルトラキャパシタ(電解2重曹コンデンサー)を開発、始動時間を10秒に短縮、加速性もアップした。これまで、10分程度かかった始動時間を大幅に短縮したことで実用化に向け大きく前進した。エネルギーとなる水素の補給にかかる時間も大幅に短縮している。
さらにV3の車両重量はV2と比べ、20%程度軽量化して1750kgになった。このため、時速130キロまでの速度で安定して走行できるようになり、航続距離も2倍の180キロまで伸びた。依然ガソリン車の半分以下にとどまるものの、長足の進歩だ。
V2の燃料はトヨタと同様にメタノールを使用したが、V3では純水素に変更。
「FCEVは全く新たなシステム。ある程度情報発信しながら、業界と協調強調し、開発全体の流れを作る必要がある」という。
独自開発という言葉にこだわってきた本田だが、「どんなに優れて技術も業界標準にならなければ、大きな損失を被る」。
トヨタ、GMが協力
対してトヨタは世界最大の自動車メーカー、ゼネラル・モーターズ(GM)と、FCEVの共同開発を表明。
本田もトヨタもFCEVの商品化の目標をともに2003年。標準化をめぐる各社間の思惑が入り乱れながら、開発競争は一段と激化しそうだ。
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防犯性を高めた自販機 まず缶飲料向け
(三洋電機)
防犯性を高めた自販機
1枚の鉄板から扉
蝶番(ちょうつがい)は内側に装着
まず缶飲料向け
三洋電機は強度や防犯性を高めた自動販売機を開発した。鉄板1枚をプレス加工した扉を採用するともに、扉と自販機本体をつなぐちょうつがいを内側に取り付ける構造にし、扉をこじ開けにくくした。こうした構造見直しにより、部品点数が従来比約28%減り、重量は約10%軽くなるという。
通常の自販機の扉は、商品見本を並べるへこんだ部分など、部位別に複数の鉄板を使って、溶接加工して作っている。またちょうつがいが、扉の左上の外側に取り付いている場合が多い。自販機を狙った犯罪の多くが、溶接部やちょうつがい部分をバールなどで壊す手口で起きている。
新開発の「Shell-D」は、一枚の鉄板をプレス加工して扉をつくることでこうした問題の解決につなげた。
また鉄板をプレス加工することで部品点数を約230点と従来に比べ約28%削減。自販機一台の組み立て時間も45分と従来より15分短くなる。
三洋の缶飲料自販機のシェアは約22%で2位。防犯性を高めた点を売り込み、シェア1位を狙う。
洗浄剤などのプラスチック容器 素材使用量4割削減
(花王)
洗浄剤などのプラスチック容器
素材使用量4割削減
軽量・省資源化を推進
花王は、シャンプーリンス類で使用するプラスチック容器の軽量化を進める。全身洗浄剤で従来品よりも、プラスチック使用量を約4割減らしたポンプ容器を11月中旬に採用する。
また、今年7月に投入した詰め替え用の新型パウチ容器を全面採用する。
容器包装サイクル法が全面施行された今年度、同社はリサイクル費用として、5億円を負担する見込み。容器の軽量化を通じて省資源と負担の軽減を図る。
新型のポンプ容器はボトルの厚みを減らした分、強度を保つために側面に8本の横の溝を刻み込んだ。現行のポンプは680ミリリットル入りで43.7グラムだが、新型容器は約4割軽い26グラムになった。
新容器は上部に3つの出っ張りがあり、真ん中が注ぎ口になっている。開封後に左右の出っ張りをつなげると注ぎ口がロート型に開いて、液体を本体ボトル容器に注ぎやすくなる仕組み。容器の重量が11.5グラムと、従来の詰め換え用容器よりも9%軽い。
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