2007年7月1日(日) <第1911号> ■労働・経営■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ - 【327】口頭による採用内定に効力はあるか - ……………………………………………………………………………………… ○口頭で「採用する」と言った場合 A社で働く社員が転職先を探してB社の面接を受けたところ、その場で採用担当者から口頭で「採用する。2カ月後には来てほしい」と言われ、A社にすぐ退職届を出しました。 しかし、その後B社が「採用するつもりはない」と態度を変えました。社員が内定取り消しとして損害賠償を求めることは可能でしょうか? ○内定は両者の合意により成立 法律上、内定は、「始期付解約権留保付労働契約」として一定の拘束力を持ちます。一般の解雇よりも基準は緩いですが、合理的な理由なしに契約を取り消すことはできません。 では、どのような状態なら「内定成立」といえるのかですが、一般的に、雇用する側と雇用される側の意思が合致し、両者の合意があったとみなされた時点で内定は成立するとされています。重要なのは、この「合意の有無」であり、口頭での約束か文書かは判断基準ではないとの考えが一般的です。 ただ、口頭での採用の意思表明は、裁判時の証明が難しいという難点があります。その場合は、身体検査の実施や就業規則の交付などが状況証拠になるといえます。 ○新卒採用と中途採用での違い また、新卒採用と中途採用では合意の判断に若干違いがあります。新卒の場合、試験や面接を経て夏頃までにいったん採用が決まっても、多くの場合、内定通知書の受け渡しや誓約書への署名などの手続きは10月ごろに行われます。 新卒者は何社もかけもちで就職活動を行い、いくつか内定をもらった中から進路を選ぶことが前提のため、誓約書への署名などの前段階で示される企業側の採用の意思表示は「内々定」として一連の手続き後の内定よりは法的な拘束力が緩いといえます。 一方、中途採用の場合は、通常、何社もかけもちで内定を取ることは考えにくいので、企業から採用の意向を示された時点で両者の合意が形成されたとみなされ、内定が成立するといえます。企業の人事権者が、「採用します」、「○月○日から来てください」などと伝えた場合は口頭でも合意が成立したといえるでしょう。 ただ、紹介者などその企業の人事権者以外から伝えられた採用の意向は、内定とは認められません。また、賃金などの条件が話題に上がっていた場合に、それが折り合わないままでは合意があったとは言い切れないでしょう。 <バックナンバー> 【268】「マザーズハローワーク」の現状と課題 【269】晩婚・晩産化で女性の労働力が上昇 【270】成果主義賃金訴訟で社員逆転敗訴の判決 【271】外国人の従業員を雇う場合の注意点 【272】雇用保険 65歳以上でも新規加入が可能に 【273】コーポレートガバナンスを学ぶ 【274】賞与をめぐる状況 【275】2005年度の概算医療費が過去最高に 【276】雇用保険の基本手当日額が変更 【277】「地域別最低賃金」を2年連続引上げへ 【278】「労働審判制度」の利用状況 【279】横行する偽装請負と労働局による是正指導 【280】社員に対する資格取得援助費用の返還請求は可能か 【281】製造業や飲食業を中心に正社員が不足傾向 【282】仕事に関係のないウェブサイトの閲覧 【283】健康保険料率の上限が2008年度から引上げ 【284】企業におけるパワー・ハラスメント防止対策 【285】育児休業取得者増加への対応が重要に 【286】出産手当金の対象者・受給額の変更 【287】健康保険法改正でどうなる 【288】若年者をとりまく厳しい雇用環境 【289】民間給与が8年連続でダウン 【290】転職で失敗しないために必要なこと 【291】雇用保険料率が引き下げられます 【292】企業の子育て支援策と導入効果 【293】会社が指定した通勤経路の変更は認められるか 【294】「医療安全管理者」指針を作成へ 【295】被災時の医療費負担が減免・猶予されます 【296】平成18年度の年末調整について 【297】各業界における人材不足への懸念と対策 【298】話題の「ホワイトカラー・イグゼンプション」とは 【299】「高年齢者雇用確保措置」の実施状況 【300】「行政サービス・住民負担の地域格差」の実施状況 【301】企業による飲酒運転対策への取り組み 【302】会社に無断でアルバイトをしたら 【303】「年収130万円」の壁、働き方で変化 【304】給与は全額差し押さえられる 【305】医療制度改革に伴う患者の医療費負担引上げ 【306】新しい年金額通知サービス「ねんきん定期便」の概要 【307】定期健康診断の受診は個人の自由なのか 【308】「働く意欲」が強い50代 【309】「景気は拡大」は9割なのに… 【310】会社員の出張が増加しているのか 【311】欧州各国における子育て支援の現状 【312】患者に安心感を与えるクリティカルパス(診療計画表) 【313】日本・ベルギー間の社会保障協定締結 【314】診療報酬の「定額制」を導入へ 【315】派遣社員の事前面接が可能になる 【316】医療機関を悩ます消費税 【317】1年変形制における年休取得日 通常賃金の計算方法 【318】1年変形制における年休取得日 通常賃金の計算方法 【319】「毎月勤労統計調査」2006年分の結果は 【320】企業も派遣社員も知って得する「紹介予定派遣」制度 【321】増加する医療相談・苦情件数 【322】会社分割に伴って行われる転籍 【323】広がらない介護休業取得 【324】どうして訪問看護師が増えないのか 【325】見直される65歳以上の介護保険料 【326】介護休業はどのぐらい取得されているか
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