2006年4月13日(木) <第1468号> ■労働・経営■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ - 【231】通勤手当の不正受給 - ……………………………………………………………………………………… 会社への通勤手段は人により様々です。電車通勤の方やマイカー通勤の方、自転車や徒歩での方もおられるでしょう。 例えば、事前に電車で通勤すると届け出た者が、会社に偽って自転車で通勤していました。そのことが判明した場合、会社側は支給した通勤手当の返還を求めることはできるのでしょうか。 −通勤手当とは− 通勤手当は通勤にかかる費用を、会社が現金または定期券などの現物で社員に支給する制度です。 本来通勤にかかる費用は労働者が負担すべきものですが、社員の福利厚生の一環として住所や通勤経路の届出を求めたうえで、合理的な経路による費用を賃金の一部として支給する会社が多くなっています。 −返還は− 通勤手当は賃金なので、通勤に使ったかどうかにかかわらず受け取ることができるとの見方もありますが、実際にかかる費用を支給する仕組みなので、使っていないならば返還しなくてはならないとの見方が大勢です。 本来払わなくてもよい通勤手当を払うことになれば、「会社に経済的損害を与えてはならない」という労働契約上の信義則に違反します。また、自転車通勤なのにあたかも電車などを利用しているように装えば、通勤経路の虚偽申告になります。 −返還の範囲と処分− 今回のように会社が社員の不正な行為により過払いとなった賃金の返還請求をする場合は、民法上の不当利得返還請求権に基づいて行うことになります。 したがって、労基法上では賃金の支払い請求権は2年(退職金5年)で消滅しますが、民法上の時効に従うこととなり、過去10年以内の不正受給分までさかのぼって返還請求することができることになります。 加えて懲戒処分として、賃金の減給処分をすることが考えられますし、また、降格、出勤停止などの処分をすることも考えられます。 −通勤災害でも− 通勤手当の不正受給は会社の処分の対象になるだけではありません。万が一、届出と違う経路での通勤途上に交通事故に遭遇した場合、労災保険上の通勤災害として認められない可能性もあります。 それは、通勤災害による給付の対象が合理的経路の途上での事故などに限定されており、届出と違う経路での通勤が、合理的経路であったとはみなされない可能性があるからです。 <バックナンバー> 【200】受動喫煙で病気になったら 【201】育児休業後、元職場に戻ることはできる 【202】女性が働きやすい職場とは 【203】派遣なのか請負なのか 【204】居酒屋でのけんかで処分される 【205】タクシー運転手の最低賃金 【206】名刺大の小冊子でできること 【207】2007年問題 技能継承に助成金 【208】結婚しても子供を多く持てない夫婦が増加 【209】SEO(検索エンジン最適化)のメリット 【210】就労意識のランキング 【211】集中力アップ 【212】児童手当、小学6年まで支給へ 【213】残業食に何を食べる? 【214】定年退職でも使える雇用保険 【215】母子家庭 【216】団塊世代 定年後の働き方の多様化 【217】紹介予定派遣需要高まる 【218】ワークライフバランス 【219】公益通報者保護法が4月に施行 【220】生活保護 【221】2005年度新入社員意識調査 【222】無断欠勤の社員を解雇できる 【223】シニア世代の心得 【224】有給休暇、取得義務付けを検討 【225】医療費、高齢者の負担増加へ 【226】在宅勤務中のケガは労災 【227】転職先に部下を引き抜いたら 【228】企業の育児支援策 【229】少子化対策 【230】公益通報者保護法(平成18年4月1日施行)
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