2005年7月15日(金) <第1196号> 「沈黙は金なり」(『聴く』)(第36回) − 相手の話をじっくり聴くとコミュニケーションが円滑になる − 【36】心がつながっていくように聞く 沈黙と間には効用があります。 プロの聞き手の会話が一般の人の会話と違う点は沈黙と間を多用することです。 沈黙の多い話は、話の内容も重要かつ真剣で、しかも利害が対立するような深刻な内容が多いのです。沈黙は話し手が自分の考えを深め、自分がわかり、自己に沈潜するために必要な時間です。 自分とは何かがわからなくなってやってきた、18歳の男子です。 聞き手1 「いかがですか」 話し手1 「調子がとまっている」 (間) 「悪くもよくもなってこない」 (間) 「気力もあまり出てこない」 (間) 「エネルギーが少ない」 <長い沈黙> 聞き手2 「気力というのは自分の方向が決まると出てくるのだけれどね」 話し手2 「気力が出てくるのが先か、行く方向が見つかるのが先かがわかりにくけれど」 (間) 聞き手3 「方向が先のような気がするけれど」 話し手3 「そういうのは意図的にわかってくるのかなあ」 聞き手4 「そうでないと思うけど」 話し手4 「では、どういう感じ」 聞き手5 「意図の源にあるものの意図というか、表面的に意図するのではないけれど」 (間) (この応答は専門的です。 無意識の感じを伝えています。不思議なことに、ちゃんと話し手には伝わっています) 話し手5 「そういうのはあまり出て来ない感じがする」 聞き手6 「というのは」 <沈黙> 話し手6 「否定はできるけれど、肯定はできない感じ」 聞き手7 「何を」 話し手7 「したくないことやいやなことはすぐに出てくるが、したいことや肯定的なことは出てこない。 しないでおくということが、自分にとって肯定的なことかもしれない。行動として何かやることが いやだから」 <沈黙> 聞き手8 「徹底的に何もしないことが、あなたにとって大切かもしれないですね」 話し手8 「はい」 <長い沈黙> 話し手9 「昔からしたいことというのがなかったから・・・」 沈黙や間は会話が途切れているのではなく、心のなかの会話がずっとつづいているのです。 聞き手に間がなければ、まぬけな会話になります。聞き手が会話に間や沈黙を必要に応じて入れられるようになると、話し手の会話はつづきます。 沈黙や間は「にらみあい」です。 このときに、相手の顔から視線をそらしては、戦わずして負けたようなものです。聞き手の沈黙と間の迫力、それを生む存在が聞き手の度量です。 心がつながっていて、迫力がある沈黙や間が入る会話ができるようになれば、上級の聞き上手になった証拠です。 聞くことは相手の表現を受け取ることなので、自己表現に比べて自分の方法で聞き方を組み立てることができにくいからです。 聞き手になると、聞くことが相手との関係を破壊してしまうような場合でも、聞く技術の獲得が行われていないので、相手とのコミュニケーションに失敗します。 しかし、聞く技術を習得していれば、多くの人との人間関係の危機が救えます。 大切な人との人間関係が構築でき、信頼感を得ることができます。 <バックナンバー> 【01】「沈黙で売る」 【02】「素直に聞く」 【03】「話し上手は聞き上手」 【04】「真剣に聞く」 【05】「相づちを打つ(その1) 【06】「相づちを打つ(その2) 【07】「相づちにも種類がある」 【08】「くり返す(相づちの高等技術)」 【09】「相づちはタイミング(上手に聞く)」 【10】「聞いた話は忘れる」 【11】「ぐちを聞く」 【12】「ぐちを聞くには極意がある」 【13】「自分のことは話さない」 【14】「相手の心を映す鏡になる」 【15】「他人のことはできない」 【16】「聞かれたことしか話さない」 【17】「答えられない質問には答えない」 【18】「じっくり相手の話を聞く」 【19】「相手の話に興味をもつ」 【20】「素直に聞く」 【21】「上下関係なしに聞く」 【22】「少しだけでも聞く」 【23】「誠実で寡黙であること」 【24】「嘘はつかない、飾らない(オープンということ)」 【25】「相手の話は相手のこと」 【26】「積極的に聞く」 【27】「相手が感じているように聞く」 【28】「話し手のリズムに乗るように聞く」 【29】「言い訳はしない」 【30】「相手の感情を受け止める」 【31】「話には小道具がいる」 【32】「相手中心に聞く」 【33】「聞き出そうとしない」 【34】「飛ばすままに聞く」 【35】「人の秘密を抱え込んでおく」
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