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2005年7月4日(月) <第1185号>
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- 【144】産業医に求められる心の病対策 -
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労働者の健康管理を行うのに必要な高度の医学的知識を持つ医師を産業医といいます。労働安全衛生法では、アルバイトや派遣社員も含めた常時勤務する労働者の数が50人を超えた事業場は非常勤の産業医を、1,000人を超えた事業場は専属の産業医を選任しなければならないと定めています。また、50人以下の事業場については地域の産業保健センターを無料で利用することができます。
これまで産業医の健康管理は主に労働者の身体面でしたが、最近では疲労やストレス等の対策として、うつ病などの心の病を早期発見し、治療の紹介から職場復帰の支援を行う「メンタルヘルスケア」についても、産業医に中心的な役割が求められるようになってきています。
○産業医の仕事
産業医は、事業場の労働者が健康で快適な作業環境のもとで仕事が行えるように、労働衛生に関する専門知識に基づいて指導・助言等を行います。
具体的には、健康診断や健康診断後の健康相談、月1回の職場巡視による作業環境の管理、労災の予防に関する助言や指導、事業場で使用する薬物や騒音が人体に及ぼす影響の教育等、多岐にわたっています。
また、労働者の健康を確保するために必要があると認められるときには、事業者に対して労働者の健康管理等について必要な勧告を行うことができます。
○心の病への取組み
産業医の仕事としては、上記のような内容が中心でしたが、近年では能力主義が浸透し、ストレスの高まりや過重労働による過労で心の健康を損なう人が増えているため、産業医の重要な職務の1つとして、うつ病など社員の心の病を予防・早期治療する「メンタルヘルスケア」が注目されています。
○心の病へのきっかけ
企業や産業医がメンタルヘルスの取組みを本格化させる転機となったのは、2000年の電通社員の過労自殺訴訟です。この一件で最高裁が、"過度の心理的負担などで健康を損なわないよう使用者が「注意する義務がある」"と判断したことがきっかけとなったのです。
この司法判断で、危険な作業をする社員の安全管理や身体面だけでなく、社員の疲労やストレス対策も会社の労務管理の対象に含まれることが明確になりました。
○各企業の取組み
複数の産業医が1年をかけて全国の営業拠点を巡回して全社員と面談を行ったり、看護師らが毎月、事業所を巡回して社員の相談に対応している企業もあります。
また、管理職を対象に部下の悩みを心理学的な手法で聞くことができるような研修を実施する企業もあります。
<バックナンバー>
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【131】日本の労務管理の父
【132】派遣社員の最低賃金の見直し
【133】育児休業等の特例
【134】労働審判法が期待すること
【135】国民年金保険料の口座振替割引制度
【136】認知症を知る一年
【137】社員の副業は違法か
【138】中小企業退職金共済制度への移行
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