2005年5月20日(金) <第1140号>
「沈黙は金なり」(『聴く』)(第16回)
− 相手の話をじっくり聴くとコミュニケーションが円滑になる −
【16】聞かれたことしか話さない
話し手にとって「自分のことを話さない」とは、
聞かれなかったら話さないということで、聞かれたらそのことだけを話すという意味です。
「聞き手に関連することを、話し手が質問することはまずない」
話し手の質問には話し手の立場にたって答えないといけないのです。
聞かれたことに、あなたの立場から答えますと、話が行き違う原因になります。
話し手
「私この間、○○のような目にあったのよ。どう思う」
聞き手
「そうね」
(と、ちょっと間をおくだけでいいのです。すると)
話し手
「腹が立つと思わない」
聞き手
「思う。思う」
話し手
「あなたならどうする」
(この質問にもほとんど答える必要はありません。
聞き手が話し手の答えを求めていることがほとんどないからです)
聞き手
「そうねー。どうするかなあー」
(と、間をおきます)
話し手
「私ね。だから言ってやったの。○○じゃないのって。思いきり抗議してやった」
聞き手
「それはそうね」
話し手
「うちは大家族でしょう。いろいろたいへんなの。
母と父の間だって、あちら立てばこちらが立たずなんてこと終始だし。
主人はほうっておけと言うけれど、そうはいかないでしょう。お宅は家族何人なの」
(この質問に対して『そうねー(間))では、相手は話のつぎ穂を失います。
具体的な質問には簡潔に答える必要があります)
聞き手
「4人」
話し手
「それなら楽だわ。うちなんて7人よ」
聞き手
「たいへんね」
話し手
「そうでしょうね。この間もね」
このように話がつづき、
話し手は自分のぐちを聞いてもらったあなたに感謝して、会話が終わります。
このとき聞き手は、「それなら楽ね」という、話し手の言葉に反発してはいけません。
聞き役の放棄は、聞き手が話の内容にひっかかり、感情的になるときがいちばん多いのです。
ひっかかると次のような応答になります。
聞き手
「そうでもないのよ。うちだってたいへんなのよ」
話し手
「それでも4人なら楽よ。うちなんか7人よ。
年寄りもいるし。 子どもと年寄りの生活が合わなくて困るのよ」
聞き手
「少ないだけで楽ということもないわ。
お宅はお母さんがいらっしゃるから留守のときも心配ないじゃない」
「でも」を言ったら会話がぎくしゃくします。
話し手の「それなら楽だわ。うちなんて7人よ」は、
疑問刑ではなく、「話し手に質問してはいけない」のです。
聞き手に聞いているのではないのです。質問していないときに答えてはだめなのです。
相手からなされた質問は「話し手のことではなく、聞き手に関することがほとんどである」
人間は、自分の聞いてほしい話を、相手に質問する形で述べるのです。
話し手
「お宅のご主人の会社のようすはどうですか」
これは質問ではなく、相手が自分の夫の会社のようすを話したいときです。
夫が昇進したことを誰かに話したかったり、夫がリストラされてたいへんだとぐちを聞いてもらいたかったりするときに、このような質問を投げかけます。
「お宅のご主人の会社のようすはどうですか」と聞かれたら、
「なんとかやっていますが、お宅のご主人はいかがですか」と、
相手がしたのと同じ質問をするのです。
聞き手はいつも相手の会話の鏡となるような応答をすることが、聞き役を持続するコツなのです。
<バックナンバー>
【01】「沈黙で売る」
【02】「素直に聞く」
【03】「話し上手は聞き上手」
【04】「真剣に聞く」
【05】「相づちを打つ(その1)
【06】「相づちを打つ(その2)
【07】「相づちにも種類がある」
【08】「くり返す(相づちの高等技術)」
【09】「相づちはタイミング(上手に聞く)」
【10】「聞いた話は忘れる」
【11】「ぐちを聞く」
【12】「ぐちを聞くには極意がある」
【13】「自分のことは話さない」
【14】「相手の心を映す鏡になる」
【15】「他人のことはできない」
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