2005年5月19日(木) <第1139号>
「沈黙は金なり」(『聴く』)(第15回)
− 相手の話をじっくり聴くとコミュニケーションが円滑になる −
【15】他人のことはできない
人が本人になり代わってやれることはほとんどありません。
親は子どもが求めているのに自分でしなさいと突き放したり、子どもがしょうとしているのに口出ししたり、とがめたり、違うやり方を横から教えたりすることは、子どもの成長にとって大きなさまたげとなります。
子どもは失敗から学びます。
子どもを応援してあげることは大切ですが、それ以上することは、逆に子どもの成長のさまたげになります。親ができることは、対社会面で子どもを守ってやること、いっしょに遊んでやること、子どもの話を聞いてやることです。
子どものしつけは小さいときほどきびしく、成長してくるにしたがって子どもの判断に任せるのが常道です。口出しが多い親は、親自身の不安や心配が関連していることが多く、夫婦仲が悪く、親が不安定になっているとこの傾向に拍車がかかります。
上司や教師自身の不安が大きいほど、口やかましく干渉しがちになるのです。この態度は、聞き手モードになるとある程度押さえられます。子育てや部下育て、生徒育てには、言って聞かせる話し手モードより聞き手モードのほうが効果的なのです。
やさしくて、親の教えを守る子どもに育てるコツの第一は、小さいときに子ども中心に遊んでやることです。子どもがもう少し大きくなると、話を聞いてやるようにします。
大切なことは自分のことが自分でできる能力をつけることです。
心のケアの最良のものは、悩みを批判したり、助言することではなく、ただひたすらに聞いてあげることなのです。子どもなら「遊ぼう。遊ぼう」と言ってきます。「遊ぼう」と言うのは、ストレスがたまりはじめているのです。「あなた、ちょっと聞いてよ」もストレスのサインです。
「遊ぼう」とか「聞いて」とかは、あなたが忙しいときに言われることが多いのです。「いま忙しいから、あとで」が、子どもを失望させます。
あなたにとって大切な人は、あなたがいちばん忙しい仕事より自分のほうを愛してくれているかどうかを知りたいのです。相手のタイミングで遊び、相手のタイミングで話を聞いてあげる。
これが相手に対してできる最大のことです。それ以外は、他の人のことはできません。
<バックナンバー>
【01】「沈黙で売る」
【02】「素直に聞く」
【03】「話し上手は聞き上手」
【04】「真剣に聞く」
【05】「相づちを打つ(その1)
【06】「相づちを打つ(その2)
【07】「相づちにも種類がある」
【08】「くり返す(相づちの高等技術)」
【09】「相づちはタイミング(上手に聞く)」
【10】「聞いた話は忘れる」
【11】「ぐちを聞く」
【12】「ぐちを聞くには極意がある」
【13】「自分のことは話さない」
【14】「相手の心を映す鏡になる」
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