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2005年6月6日(月) <第1157号> 
 
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                   - 【133】労働審判法が期待すること -  
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 個別労働関係民事訴訟は、バブル経済が崩壊した平成3年を境に急増しています。それまで年間600件から700件前後の件数で推移していたものが、平成15年には約4倍になり、過去最高の2,433件となりました。具体的に平成3年頃と比較すると、平成15年には、賃金手当等の訴訟が約5倍、普通解雇の訴訟が約4倍に増加しています。 
 
 こうした背景を受けて、個別労働関係民事紛争を短期間で実情に即して解決する制度づくりが求められてきました。それが裁判所内ADR、いわゆる労働審判制度です。労働審判法は、昨年5月122日に公布され、平成18年4月1日から施行される予定です。 
 
 労働審判制度の内容は、次のとおりです。 
 
 ○ 裁判官である労働審判官1名と中立かつ公正で知識経験共に 
    豊富な労働審判員2名からなる労働審判委員会で行う。 
 ○ 労働審判委員会は、全国に50ある地方裁判所に設けられる。 
 ○ 労働審判手続においては、原則として3回以内の期日で審理し、結論を出す。 
 ○ 調停を原則とし、調停が成立しない場合は、事案の実情に即した労働審判を行う。 
 ○ 労働審判に不服のある場合は、2週間以内に異議の申立てをすることができる。 
 ○ 異議の申立てのない場合には、労働審判は確定し裁判上の和解と同一の効力を持つ。 
    (民事執行力を有する) 
 ○ 労働審判に対して異議の申立があった場合には、労働審判手続の申立時に、 
    労働審判がなされた地方裁判所に訴えの提起があったものとみなす。 
  
 労働審判の対象となるのは、労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争です(厚生労働省の個別労働関係紛争解決促進法第2条の個別労働紛争と同義)。法的な権利義務関係に争いがあり、その争点について3回程度で主張立証していくことが可能と思われる紛争が適しています。 
 
 具体的には、解雇をめぐる紛争のうちの比較的軽微なものや退職金等の支払いをめぐって法的な争いがある場合などです。 
 
 一方、労働審判の対象とならないのは、次の3類型です。 
 ○ 企業と労働組合との間のいわゆる集団的労使紛争 
 ○ 労働者同士の紛争や労働者と労働組合との紛争 
 ○ 権利紛争ではない、当年度の賃上げなどの利益紛争 
 
 今後、労働審判法の施行により期待されるのは、上述したように労使紛争の早期解決を可能にする仕組みを実現させることと、労使紛争の当事者が法律解釈や判例の基準などに従って紛争を解決することに慣れること、民事訴訟等のスピード化、の3点となります。 
 
 
<バックナンバー> 
 
【130】労働保険の強制加入の強化 
【131】日本の労務管理の父 
【132】派遣社員の最低賃金の見直し 
【133】育児休業等の特例
 
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