2005年5月9日(月) <第1129号> ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ - 【125】通勤災害制度の対象を拡大 - ……………………………………………………………………………………… 厚生労働省が労働政策審議会に諮問していた労働安全衛生法等の改正案について、おおむね妥当とする答申がなされました。厚生労働省では、この答申に沿って改正法案を今国会に提出し、早ければ平成18年4月1日より施行されることになります。 ○ 現行の通勤災害の保護範囲 通勤災害の保護制度は、労働者が通勤途中に負傷した場合に、業務上災害に準じた措置を労災保険から行うことを目的としています。 通勤の定義として「労働者が就業に関し、住居と就業の場所との間を合理的な経路および方法により往復することをいい、業務の性質を有するものを除くものとする」と定められ、具体的には、自宅などの「住居」から会社、工場などの「就業の場所」へ向かう行為、または就業の場所から住居へ帰る行為であること等が要件となります。 ○ 複数就業者の事業場間の移動 始業前や終業後に、別の会社でアルバイトなどをしている社員(いわゆる複数就業者)が、アルバイト先から会社へ直接向かう途中、あるいは終業後にアルバイト先に直接向かう途中の災害は、現行の制度では「住居と終業の場所との間」にはならないため、通勤災害の保護の対象外とされています。 しかし、ワークシェアリングの推進や社員の副業を解禁する企業が増えてきていること等に伴い、複数の企業で就業する者が増加しつつあるという現状があり、複数就業者の事業場間移動についても、通勤災害の保護の対象とすることが適当であるという提言がなされました。 最初の会社から次の会社への移動は、次の会社への出勤行為にあたるため、この途中で生じた災害については、次の会社の労災保険を適用するという処理になりそうです。なお、会社が兼業を禁止しているか否かについては関係なく、通勤災害として保護されることになると考えられます。 ○ 単身赴任者の赴任先と帰省先の移動 単身赴任者が週末などに家族の住んでいる自宅に戻る間に災害が生じた場合、行政解釈としては、会社から直接、家族の住む自宅へ帰る場合や、その自宅から直接会社に出勤する場合については、原則として通勤災害として認められています。 しかし、単身赴任先のアパート等から家族の住む自宅に帰る「住居間移動」については、通勤の定義にある「住居」と「就業の場所」との往復行為とは認められていません。 実態として、単身赴任者が家族の住む自宅に帰省する場合、帰省の準備のために一度、単身赴任先のアパート等に戻ってから自宅に戻ることが多いという現状があり、単身赴任先の住居を「就業の場所」とみなして通勤災害として保護すべきという提案もあわせてなされています。 <バックナンバー> ○ 井上 充さん 【 61】タクシー運転手と請負 【 62】タクシー運転手という仕事 【 63】雇用情勢 【 64】高齢者雇用の取組み 【 65】NEET(ニート) 【 66】技能系社員登用制度 【 67】個人業務委託 【 68】労働形態の多様化 【 69】雇用対策の転換 【 70】採用の良否 【 71】派遣労働者の現状 【 72】新卒者内定状況 【 73】ICという働き方 【 74】某社人事担当者の悩み 【 75】営業マンの休憩時間 【 76】オーケストラの年収 【 77】労働時間延長に動く独企業 【 78】就業促進手当 【 79】第三者行為労災について 【 80】プライバシーマーク 【 81】改正労働基準法 【 82】過労自殺 【 83】私的メールのモニタリング 【 84】ビジネスマンが重視するものは 【 85】社員の起こした交通事故について 【 86】基本4情報の漏洩 【 87】聖域を外部委託した生保 【 88】医療機関の個人情報保護 【 89】生命保険の手数料 【 90】プライバシーマーク・認定申請増える 【 91】カンタン個人情報保護対策 【 92】求職活動支援書 【 93】改正代金法 【 94】成績不良と解雇 【 95】市場化テスト 【 96】セクハラ相談 【 97】給与計算の変更点 【 98】ADRって何? 【 99】悪用される全喪届 【100】信用と取引信用保険 【101】保険料の節約法 【102】労働福祉事業と雇用保険三事業 【103】年金暮らしと税金 【104】年俸制について 【105】65歳までの雇用確保が義務付けられます 【106】労働組合法が改正 【107】育児・介護休業法が改正 【108】会社を退職した方が創業する場合の助成金 【109】ストックオプションの利益は給与所得 【110】人事考課 【111】成果型賃金制度導入の難しさ 【112】賃金体系の変遷 【113】2007年問題 【114】大規模小売業への排除勧告 【115】退職システムの複線化 【116】ライフシェア5箇条 【117】能力評価基準の策定 【118】労災保険料の業種区分を細分化へ 【119】国民健康保険法 【120】営業の練習 【121】高年齢者の賃金設定 【122】残業代未払い問題 【123】現場力の伝承と安全対策 【124】雇用改善に地域間、男女間、世代間の格差
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