2005年4月13日(水) <第1103号> <バックナンバー> ○ 井上 充さん 【 61】タクシー運転手と請負 【 62】タクシー運転手という仕事 【 63】雇用情勢 【 64】高齢者雇用の取組み 【 65】NEET(ニート) 【 66】技能系社員登用制度 【 67】個人業務委託 【 68】労働形態の多様化 【 69】雇用対策の転換 【 70】採用の良否 【 71】派遣労働者の現状 【 72】新卒者内定状況 【 73】ICという働き方 【 74】某社人事担当者の悩み 【 75】営業マンの休憩時間 【 76】オーケストラの年収 【 77】労働時間延長に動く独企業 【 78】就業促進手当 【 79】第三者行為労災について 【 80】プライバシーマーク 【 81】改正労働基準法 【 82】過労自殺 【 83】私的メールのモニタリング 【 84】ビジネスマンが重視するものは 【 85】社員の起こした交通事故について 【 86】基本4情報の漏洩 【 87】聖域を外部委託した生保 【 88】医療機関の個人情報保護 【 89】生命保険の手数料 【 90】プライバシーマーク・認定申請増える 【 91】カンタン個人情報保護対策 【 92】求職活動支援書 【 93】改正代金法 【 94】成績不良と解雇 【 95】市場化テスト 【 96】セクハラ相談 【 97】給与計算の変更点 【 98】ADRって何? 【 99】悪用される全喪届 【100】信用と取引信用保険 【101】保険料の節約法 【102】労働福祉事業と雇用保険三事業 【103】年金暮らしと税金 【104】年俸制について 【105】65歳までの雇用確保が義務付けられます 【106】労働組合法が改正 【107】育児・介護休業法が改正 【108】会社を退職した方が創業する場合の助成金 【109】ストックオプションの利益は給与所得 【110】人事考課 【111】成果型賃金制度導入の難しさ 【112】賃金体系の変遷 【113】2007年問題 【114】大規模小売業への排除勧告 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ - 【115】退職システムの複線化 - ……………………………………………………………………………………… 60歳定年の定着過程で、多くの企業は中高年齢労働者を対象とする早期退職優遇制度や移籍出向などを導入し、退職システムの複線化を行い、人件費コストの削減を図りました。大企業に勤務する雇用者ほど、年齢の高まりに伴う雇用の減少度合いが大きいのは、大企業ほど高い賃金コストの高年齢者雇用を50歳台から調整するというインセンティブが働くからです。 定年を引き上げることによって、逆に定年前の離職が増加することになり、皮肉にも定年制の雇用保障機能が弱められました。それに対し、市場競争に晒される外部労働市場での均衡賃金が機能する小規模の企業ほど、雇用調整圧力は小さくなります。 茨木商工会議所が65歳継続雇用達成事業で行ったアンケートによると、「継続雇用制度あり」が72.4%、「継続雇用制度なし」が27.2%となりました。継続雇用制度がある企業の定年年齢の内訳は、「60歳」が70.3%であり、「定めなし」が17.0%でした。一方、継続雇用制度がない企業の定年年齢の内訳は、「定めなし」が67.2%であり、「60歳」が26.2%でした。 高齢者就業の制約要因は、 ○ 個々の雇用者の熟練があまりにも企業特殊的であり、 別の企業に移ることによってその生産性が大きく低下すること ○ 定年直前には、個人の賃金水準が一般にその生産性を大きく上回っていること ○ 高年齢者に対して性別や学歴と同様の差別・偏見があること などが挙げられます。 ということは、大企業の男性雇用者や高学歴者ほど、雇用条件の大幅な悪化に甘んじなければ継続雇用が困難になるということです。逆に、中小企業の雇用者や女性雇用者ほど、雇用継続されやすくなります。改正高年齢者雇用安定法の猶予期間が、大企業が5年であり中小企業が3年であるのは、実施の困難度から考えると逆のほうが適切かもしれません。 先述したように、60歳定年延長の達成過程では退職システムの複線化が進みました。改正高年齢者雇用安定法は、確保されるべき雇用形態として、必ずしも労働者の希望に合致した職種・労働条件による雇用を求めるものではありません。いかなる処遇での再雇用とするかは、労使自治に任されており、65歳への継続雇用は年功的な賃金制度や人事処遇制度とは切り離された形で実施されます。
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