2005年3月31日(木) <第1090号> <バックナンバー> ○ 井上 充さん 【 61】タクシー運転手と請負 【 62】タクシー運転手という仕事 【 63】雇用情勢 【 64】高齢者雇用の取組み 【 65】NEET(ニート) 【 66】技能系社員登用制度 【 67】個人業務委託 【 68】労働形態の多様化 【 69】雇用対策の転換 【 70】採用の良否 【 71】派遣労働者の現状 【 72】新卒者内定状況 【 73】ICという働き方 【 74】某社人事担当者の悩み 【 75】営業マンの休憩時間 【 76】オーケストラの年収 【 77】労働時間延長に動く独企業 【 78】就業促進手当 【 79】第三者行為労災について 【 80】プライバシーマーク 【 81】改正労働基準法 【 82】過労自殺 【 83】私的メールのモニタリング 【 84】ビジネスマンが重視するものは 【 85】社員の起こした交通事故について 【 86】基本4情報の漏洩 【 87】聖域を外部委託した生保 【 88】医療機関の個人情報保護 【 89】生命保険の手数料 【 90】プライバシーマーク・認定申請増える 【 91】カンタン個人情報保護対策 【 92】求職活動支援書 【 93】改正代金法 【 94】成績不良と解雇 【 95】市場化テスト 【 96】セクハラ相談 【 97】給与計算の変更点 【 98】ADRって何? 【 99】悪用される全喪届 【100】信用と取引信用保険 【101】保険料の節約法 【102】労働福祉事業と雇用保険三事業 【103】年金暮らしと税金 【104】年俸制について 【105】65歳までの雇用確保が義務付けられます 【106】労働組合法が改正 【107】育児・介護休業法が改正 【108】会社を退職した方が創業する場合の助成金 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ - 【109】ストックオプションの利益は給与所得 - ……………………………………………………………………………………… ストックオプション(自社株購入権)で得た利益が「一時所得」か、税額がほぼ倍になる「給与所得」に当たるかが争われた訴訟の最高裁判決が下されました。 最高裁では「給与所得に当たる」との初判断を示し、納税者側の上告を棄却しました。ストックオプションを巡る同種の訴訟は約100件あり、労務の対価として所得税法上の「給与所得」に当たるか否か、地裁レベルでは判断が分かれていました。 今回の最高裁判決で、司法の判断として「給与所得」として決着したことになります。 ○ ストックオプションとは ストックオプションとは、一定の業績が上がったときなどに、企業が取締役や社員に一定の価格で自社株を購入する権利を与えておき、取締役や従業員が一定期間内にその権利を行使し(企業から株式を購入する)、株価が値上がりしたときに差益を得ることができるという制度です。平成9年の商法改正により、広く、一般企業においても適用することができるようになりました。 ○ ストックオプションのメリット 企業業績が向上し、株価が上昇すれば、その分がストックオプション対象者のインセンティブとなるため、業績に対する意識が高まり、勤労意欲の向上を促進することができます。 ○ 労働基準法の解釈 「ストックオプション制度から得られる利益は、それが発生する時期および額ともに労働者の判断に委ねられているため、労働の対償ではなく、労働基準法第11条の賃金には当たらない」とされています。そのため、ストックオプションを賃金の一部として扱うことは労働基準法違反となります。あくまで賃金や賞与等とは別のものとしておく必要があります。 しかし、労働の対償としての賃金には当たりませんが、「労働者に付与されるストックオプションは、労働条件の一部である」ともされているため、ストックオプション制度を導入する際には就業規則に定めておかなければなりません。 ○ この判決の影響 労働基準法の解釈としては、上記のように「労働の対償としての賃金には当たらない」とされていたため、ストックオプションによる利益に対しては労働保険、社会保険ともにかからないという扱いでした。 しかし、今回の判決で「給与所得」となった以上は、所得税法上の区分だけの問題ではなく、保険料の算定についても今後影響が出てくる可能性もあります。
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