2004年7月29日(木) <第967号>
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【最適設計】
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<復活!乱視点>
【47】「20××年」問題
○ 2007年問題
団塊の世代が60歳定年に達したときには、退職者世代が新人社員世代の人口に比べて2倍以上に増えます。
ある経済新聞の調査では、主要企業の2005年度の高卒採用は4年ぶりに増加すると予測しています。これは、熟年の労働者が大量に離職することへの備えと、熟年社員(退職者世代)から若手社員(新人社員世代)への技能継承の必要が、企業を高卒新卒者の採用増へと向かわせています。
これまで安全や品質を向上させてきた熟年社員が企業を去ったあとの対応をどうするのか。
いま、企業の採用現場でも日本の製造業の生き残りをかけた取り組みが行われています。
● 「緊急保守マイスター」(東京ガス)
ガス管保全を担当する熟年技術者たちです。
● 「社員の技能マトリックス表」(三菱重工業・神戸造船所)
熟年社員の高度技能を個人別にリストアップ。若い世代のだれにどの技能が継承させるかを予め決めていきます。
<バックナンバー>
【01】〜【21】役員退職金決定の考え方と手続き
【22】伸びる人材と企業の見極め方
【23】現況調査時の現物確認
【24】法人税関連項目のチェックポイント
【25】「みなし大会社」
【26】医師の事業所得の確定申告
【27】消費税法第63条の2(価格の表示)について
【28】会社の「実行度・徹底度」
【29】総額表示方式の実施(公正取引委員会のQ&A)
【30】住宅ローン控除
【31】経常利益を大きくする
【32】業種区分(自ら開発したゲームソフトを量販した場合)
【33】贈与税の配偶者控除
【34】請負契約と委任契約の判断(印紙税)
【35】労働基準法等による金銭の取扱い
【36】事例に学ぶ病院の生き残り戦略
【37】生計を一にする
【38】試験研究費の総額に係る税額控除制度
【39】シルバービジネスへの参入を考える
【40】個人年金と税金
【41】定期借地権付住宅の住宅ローン控除
【42】貸借対照表を作り直す(経営指標の活用)
【43】総資本経常利益率/正味運転資本比率(経営指標の活用)
【44】コスト・マネジメントの意義(コスト・マネジメント)
【45】インテグレーテッド・コスト・マネジメント(コスト・マネジメント)
【46】相続財産から控除する葬式費用の取り扱いについて
【47】マイレージサービスは所得税の課税対象か
【48】広大地の評価
【49】パート・アルバイトの活用法(フードサービス業における店舗)
■「奈穂の税務相談」■
毎週木曜日は、若手女性税理士としてご活躍、経営者への的確なアドバイスが好評、
また佐藤税理士事務所所長でもある佐藤奈穂里さんにコラム「奈穂の税務相談」をお書き
いただいています。
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【50】死亡保険金と退職金の課税関係判決について
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○ 死亡保険金と退職金の課税関係
生命保険金を原資とした死亡等退職金については3件の判決例があります。
3件共、死亡等退職金の原資が生命保険金であっても、支給と原資は切り離して考えるべきであり、退職給与の適正額の算定にあたり特段の斟酌は必要ないとしています。
税務の実務もこの考え方で運用されています。以下は判決要旨です。
● 大阪地裁(昭31.12.24 判決)
昭和30年(行)第74号審査決定取消事件(棄却)(確定)
「同族会社が、その役員を被保険者、被保険者死亡の場合の保険金受取人をその会社とする生命保険契約を締結し、この保険契約に基づいて会社が取得する保険金と同額を当該死亡役員の退職給与金として支給する場合であっても、その額が適正額より多額であると認められる場合は、過大額については旧法人税法31条の3の規定が適用されるものと解するのが相当である。
この場合、会社がかかる保険契約(いわゆる事業家保険契約又は役員保険契約)を締結するのは永年勤続の後に退職する役員に退職給与金を支給する必要を充足するためと、役員の死亡により受けることあるべき経営上の損害を填補するためであるから、会社が取得した保険金中、当該死亡役員の退職給与金の適正額より多額であると認められる部分は、役員の死亡により会社の受ける経営上の損害の墳補のため会社に留保せらるべきものであるからである。」
この判決では、旧法人税法第9 条を引用し、保険金収入という総益金と、退職金の支給という総損金との関係について「損金と益金とは別個に計上される建前を取っており、それ故ある役員に支給した退職給与金という損金が、事実上、会社がその役員を被保険者とする保険契約に基づいて取得した保険金という益金を直接の財源として支出されたとしても、計算上は益金は益金、損金は損金と別個に勘定されているのであるから、そのことは、この場合に旧法人税法31条の3の規定を排除すべき理由となると考うべき余地は全然存しない。」としています。
● 長野地裁(昭和62年4月16日判決)
昭和56年(行ウ)第12号法人税更正処分等取消請求事件(棄却)(確定)
「原告は、・・本件のように役員が死亡した際にその遺族に対して支払うことを予定して、法人を受取人とする生命保険契約が締結されていたところ、保険事故が発生し、法人が入手した生命保険金をその遺族に対して支払った場合には、その金額のいかんを問わず、全額を損金算入するのが法人税法36 条の趣旨にも税務行政の実態にも合致すると主張し、
・・退職金額の相当性は経済事情からみて正常か否かで決すべきものであるところ、法人の退職金支払能力は、生命保険の支払いを受けたことにより生じたのであり、役員の死亡が右原資を得るについての貢献であるから、生命保険金の全額又は大半を役員の退職金として遺族に支給することは経済事情からみて正常である、などと主張する。
しかしながら、・・法人税法36条の趣旨からみて、役員退職給与の損金性は、役員の法人に対する役員としての役務提供による貢献度によって決せられるべきものであるから、退職給与の支給とその原資は切り離して考えるべきであり、その原資が当該役員の死亡を原因として支払われた生命保険金であるからといつて、当然に支給額の全部または一部が相当な額として損金に算入されるべき理由はない。」
● 東京高裁(平元.1.23判決)
東京高裁昭和63年(行コ)第61号法人税更正処分等取り消し請求控訴事件(棄却)(確定)
「保険金収入とほぼ同額の金員を当該死亡役員の退職給与として支給した場合であっても、利益金としての保険金収入と、損金としての退職金支給とは、それぞれ別個に考えるべきものであるし、一般に会社が役員を被保険者とする生命保険契約を締結するのは、永年勤続の後に退職する役員に退職給与金を支給する必要を充足するためと、役員の死亡により受けることがある経営上の損失を補填するためであるというべきであるから、
会社が取得した保険金中、当該役員の退職給与の適正額より多額であると認められる部分は、役員の死亡により会社の受ける経営上の損失の補填のために会社に留保されるべきものである。
したがって,課税庁が保険金の支払の有無を当該死亡役員に対する退職給与の適正額算定の資料として特段の斟酌をしていないとしても、これをもって、不当な算定方法であるということはできない。」
(注)この判決は昭63.9.30の静岡地裁判決を支持したものです。
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