2003年8月26日(火) <第629号>
■労働・経営■
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- 【12】求人時と入社後の労働条件の相違 -
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最近顧問先になった新設の会社の社長から、次の質問がありました。「今度、雇い入れた社員から、求人票の内容と実際の労働条件が違っていると指摘されました。残業時間が求人票より多いことが不満のようです。求人票に記載した時間までしか残業させられないのでしょうか?」
これに対し、当事務所では次のように回答しました。
求人票に記載した条件は、通常その内容が労働契約の内容とされると考えられますが、すべての条件がこれに拘束されるわけではありません。もちろん労働契約等で特別の定めがされている場合はこれによります。今回の件についていえば、一般に求人票の残業時間は平均値が記載されていますが、業務や時期により求人票記載の時間数を超えることがあってもやむを得ないということになります。
あえて法的なことを持ち出すと、求人票の性格は求人広告と同様、応募者に対する「申込みの誘引」と考えられます。求人票を見た本人が応募して初めて「契約の申込み」となり、会社が選考し採用を決定した段階で「申込みの承諾」となり、申込みと承諾があって初めて労働契約の締結となります。この流れの中では、求人票の記載事項が当然に労働契約の内容となるわけではありません。あくまでも本人と会社との間で結ばれた個別の労働契約によることとなります。
しかし、実際の労働条件とかけ離れた内容で求人しても構わないということではありません。本人は求人票に記載された条件を見て応募を判断するものであり、この内容が労働契約の内容となると考えるはずです。会社から見ても、求人票記載の条件が労働契約の内容となるとの前提で、求人を出しているはずです。これらのことから、当事者間で特約等があれば、その限りにおいて有効となりますが、格段の取り決めがない部分は求人内容がそのまま労働契約の内容となると考えるのが妥当です。
本相談の事例の場合、求人票にすべての労働条件をきっちり記載するのは困難であり、残業時間等のように職務や時期により必ずしも特定できない要素も含まれます。通常、労働契約の締結時において「残業がある」旨の説明なり、労働契約書等に記載があるはずなので、この場合は労働契約の内容が優先されます。別な考え方として、求人票記載の条件はあくまでも見込みであり、個別の労働契約により確定するとの見方もできます。賃金が端的な例で、求人票には経験や能力により幅をもたせて記載されているのが普通です。
いずれにせよ、求人時に記載する労働条件は正確であるべきです。例外や見込みがある場合はその旨記載し、応募時に必ず説明しておきましょう。
●「ナイス・ビジネス・パートナー」(NBP)
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