2002年9月24日(火) <第293号>
■中小製造業の戦略的思考・・2「市場における競争について」企業が行うべき競争(後)
我が国の生産する小型自動車の燃費はリッター15km程度が常識、テレビは真空管からトランジスターへそして集積回路(IC)へ、家庭用冷蔵庫も大幅省電力。そして何れも理想的な品質管理のもと生産され、故障知らず、完成品から部品生産に至るまで、完全なまでの品質管理体制。気がついて見たら 、我が国の製造業は世界ナンバーワンの地位を確保していた。
結果はともかく、我が国からアメリカへは集中豪雨的と言われる輸出、世界各国への輸出による毎年10兆円を超す貿易黒字、この時期、私見ではあるが世界の産業構造は日本によって変えられた、と考えられる。イノベーションとはかくも大きな力を持ち、大きく結果を変える物だと言うことを、はからずも我々は体験をする事になった。
シュームペーターの言う、プロセスイノベーションとプロダクトイノベーションを同時に達成した我が国の製造業は、世界最高の生産性と、技術開発力を備え、向かうところ敵なしの状況を作り上げた。技術こそ産業の全てだ、と言わんばかりに技術に傾注をした我が企業が、ある時、突然、全く突然、企業財務に強い関心を持つようになった。
80年代に入り、輸出を中心とした我が国の経済成長は、更に大きな国際収支の黒字をもたらし、外貨の大幅収入はそのまま国内の金余り現象となり、資産インフレを誘発する事になった。あとでバブル経済と呼ばれる、実体の伴わない資産インフレヲ中心とした、経済が始まったのである。
土地を中心とした不動産価格、建物の賃貸価格、株式の暴騰、資産インフレはこうして始まった。原因は流入する外貨による過剰流動性、通貨政策の失政、特に日銀政府を中心とした通貨当局の無策が、大きな原因と考えられる。
企業は規模の拡大と価格競争に勝って市場占有率を上げることに専念し、新技術の開発は2の次になってしまった。流通も価格破壊と称し価格競争にのみ専念し、店舗の拡大にのみ力を注いだ。金融証券も競って規模の拡大と品揃えの拡大に血道を上げ、本来のビジネスと目的を忘れてしまった様だ 。
銀行の貸し出し業務は、企業の必要とする設備投資資金、拡大するマーケットに対する増加運転資金を提供するために存在していたはずである。投機や博打の元手を提供する事は御法度のはずである。それが自行のシェアー拡大のために、競って投機資金の元手を提供した。
自動車会社も電機メーカーも価格競争による規模拡大(シェアー拡大)、品揃え競争(総合メーカー)増資社債による企業規模拡大、等々と企業がやるべきでない事を全て行い、破滅への道を歩み始めた。
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