2007年1月15日(月) <第1745号> ■労働・経営■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ - 【304】給与は全額差し押さえられる - ……………………………………………………………………………………… ○差し押さえ命令の出た社員への支払いは? 会社員の借金返済が滞り、裁判所から給与の差し押さえ命令が出てしまいました。しかし、給与は雇用主が本人に直接支払うべきものだと法律で定められています。命令の法的意味は重そうですが、全額を押さえられたりするケースはあるのでしょうか。 ○賃金支払いの5原則 労働基準法では、使用者に対して立場が弱くなりかねない労働者の生活を守るため、「賃金支払いの5原則」(直接払い・通貨払い・全額払い・毎月払い・一定期日払い)が定められています。 ○裁判所の差し押さえ命令には従うべき? 裁判所が差し押さえを命じたということは、法的に貸主の主張が通ったということです。この場合、その会社員は差し押さえ命令に応じなければなりません。直接払いの原則に反するようにも見えますが、問題はありません。このようなケースは借金返済が滞った場合だけでなく、国や地方への税金の滞納なども同様の扱いとなります。 ○4分の3は原則本人に 給与を全額差し押さえられれば、その会社員は生活ができません。このため、差し押さえ金額は原則として賃金の4分の1となっています。雇用主は4分の3を本人に、4分の1を貸主や国・地方に支払うこととなります。この場合、債務者保護の観点から、賃金から所得税、地方税、社会保険料などを控除した手取り賃金をベースに考えられます。 全額差し押さえを禁じているのが生活保護の観点であるため、標準的な世帯所得を超える高い給料をもらう人からは、政令で定める額を超える部分の全額を差し押さえに回せることとなります。 ○「直接払いの原則」の効力 「直接払いの原則」は、この差し押さえ命令以外ではかなり強い効力を持ちます。例えば複数の社員から委任を受けた者にまとめて支払い、後に分配してもらうことは許されませんし、代理人などへの賃金支払いも「直接」の原則から反するとされています。 もし、社員が賃金を第三者に譲渡することを当事者間で合意していても、雇用主はとりあえず本人に支給するべきです。 <バックナンバー> 【268】「マザーズハローワーク」の現状と課題 【269】晩婚・晩産化で女性の労働力が上昇 【270】成果主義賃金訴訟で社員逆転敗訴の判決 【271】外国人の従業員を雇う場合の注意点 【272】雇用保険 65歳以上でも新規加入が可能に 【273】コーポレートガバナンスを学ぶ 【274】賞与をめぐる状況 【275】2005年度の概算医療費が過去最高に 【276】雇用保険の基本手当日額が変更 【277】「地域別最低賃金」を2年連続引上げへ 【278】「労働審判制度」の利用状況 【279】横行する偽装請負と労働局による是正指導 【280】社員に対する資格取得援助費用の返還請求は可能か 【281】製造業や飲食業を中心に正社員が不足傾向 【282】仕事に関係のないウェブサイトの閲覧 【283】健康保険料率の上限が2008年度から引上げ 【284】企業におけるパワー・ハラスメント防止対策 【285】育児休業取得者増加への対応が重要に 【286】出産手当金の対象者・受給額の変更 【287】健康保険法改正でどうなる 【288】若年者をとりまく厳しい雇用環境 【289】民間給与が8年連続でダウン 【290】転職で失敗しないために必要なこと 【291】雇用保険料率が引き下げられます 【292】企業の子育て支援策と導入効果 【293】会社が指定した通勤経路の変更は認められるか 【294】「医療安全管理者」指針を作成へ 【295】被災時の医療費負担が減免・猶予されます 【296】平成18年度の年末調整について 【297】各業界における人材不足への懸念と対策 【298】話題の「ホワイトカラー・イグゼンプション」とは 【299】「高年齢者雇用確保措置」の実施状況 【300】「行政サービス・住民負担の地域格差」の実施状況 【301】企業による飲酒運転対策への取り組み 【302】会社に無断でアルバイトをしたら 【303】「年収130万円」の壁、働き方で変化
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