2006年10月27日(金) <第1665号>
■労働・経営■
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- 【279】横行する偽装請負と労働局による是正指導 -
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○「偽装請負」の現状
製造業の工場などで「偽装請負」と呼ばれる違法な労働形態が広がりを見せています。メーカーなどが請負労働者に直接指揮命令を行う偽装請負について、厚生労働省では、労災隠しにつながる恐れもあると警戒を強め、全国の労働局が2005年度に是正指導した件数は過去最多となりました。
偽装請負が見つかった場合、多くは労働局の是正指導でとどまっていますが、悪質な場合は「事業改善命令」や「事業停止命令」などで対応しているようです。
○「偽装請負」とは
偽装請負は労働者派遣法などに抵触するもので、元々建設業界に多かったのですが、最近では製造業などでも横行するようになり、厚生労働省では、2004年度から企業への立ち入り調査を強化していました。
メーカーの製造現場などで偽装請負が増えている背景には、外部の労働者を低賃金で、しかも安全責任もあいまいなまま使える好条件を、メーカー側が暗黙のうちに利用している実態があると言われています。
メーカーなどが外部の労働者を指揮命令するためには、労働者派遣法に基づき派遣契約を結ぶ必要がありますが、形式的な「請負」と装った場合には労働安全衛生法上の義務などを負う必要がなくなります。派遣、請負、正社員が同じ工場で働く場合、企業側が直接指揮命令を行えるのは派遣と正社員のみです。
そこで工場内での業務をスムーズに、効率よく進めたい企業が、一括して直接命令を出して「偽装請負」となるケースもあるようです。また、メーカー側がきちんと派遣に切り替えた場合、派遣労働者が原則1年以上同じ企業で勤務した場合、労働者に直接雇用を申し入れなければならないためにコスト増になることから、派遣への切り替えに消極的な企業が多いのが実態のようです。
○つながる「労災隠し」への不安
偽装請負が行われている場合、請負会社は労働者をメーカーに送り込むだけで、安全に関する責任の所在があいまいになりがちです。
そしてひとたび「労災」をきっかけに行政機関期間が立ち入り調査すると、偽装請負が発覚してしまう可能性があることから、「労災隠し」が起きやすいとも言われています。これでは労働者も「安心して働けない」と不安の声が広がっているのです。
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