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2002年10月21日(月) <第320号>

■中小製造業の戦略的思考・・・4
「市場における競争について」
企業が行ってはいけない競争

3,品揃え競争
 企業が絶対に参加してはいけない競争種目、「価格競争」「規模拡大競争」「品揃え競争」の3種目は、大体同時に行われる。そして企業間の勝ち負け、優劣がはっきりしてしまうのが特徴となる。いわゆる「優勝劣敗」である。血も涙も、情けも何もない、不毛の結果を経験する事になる。

 どんな大国でも、戦線が広がれば手薄な所、目の届かない所、無駄なところ、と色々不都合が起きる。これが過剰な品揃えと言うことであり、体力を越えた戦線になると、その戦線は敗北へと導かれる。価格競争、規模拡大競争、品揃え競争、は何れも戦で言えば総力戦であり、体力消耗戦である。

 規模が始めから大きく、資金が豊かな陣営が勝つ事は、戦う以前に理解できなくてはならない。実際の場面では、強い方から仕掛け、相手に駄目押し的、損傷を与え自陣に絶対的な地位を約束する。

 規模が小さく、品揃えも貧弱な企業はいつでも敗戦か、というと、そんな事はない。こちらはゲリラ戦と言う方法がある。現代ビジネスの世界におけるゲリラ戦とは、品質、技術、企業内容と言う種目の戦をすることである。

 1980年代後半、我が国最大の自動車製造会社トヨタは、突然、全く唐突とも思えるスピードで、車種を増やし、販売チャンネルを倍増し、市場に構成を賭けた。それを迎え撃つ他社も、急遽これに対抗、三菱、ホンダ、マツダ、日産、何れも車種を増やし、販売店を増やし、必死に対抗策を実行した。

 結局、全社トヨタの総合戦線での戦に敗退。マツダは外資の傘下に、ホンダは倒産寸前まで追いつめられ、三菱も90 年代に入り、急速に経営を悪化させることになった。日産も最後は、外資の傘下に入らざるを得ない状況になり、ルノー傘下に入った。此の商戦、規模の小さい順に経営が破綻していった事も、興味深い事である。

 結局はトヨタの一人勝ち、ホンダは途中でいち早く此の戦線から離脱、技術で新しいマーケットへ移動、その後の業績は好調の一本道である。

 始めから、トヨタの仕掛けた戦線に参入せず、我が道を行ったスズキは、企業規模で言えば、トヨタの10%程度でありながら、経営内容はますます好調。同じルールで競争すれば、勝ちは1社のみ、これが、いつでも、どんな場合でも、決められた結果である。

 国内NO1 のトヨタも、世界市場ではNO1 ではない。当然戦う戦略は異なる。戦う相手はアメリカの大量生産車、高級車、ヨーロッパの小型車、超高級車、と言うことになる。企業規模で言えば、GM, フォード、クライスラーベンツ、その次である。つまり規模から言えばNO4 である。

 戦う戦略は国内とは全く異なる。注意をすれば良く理解は出来る。トヨタの掲げた目標は、第一に品質、第二に技術、第三に財務内容、、、、、トヨタ自身が自ずから外部に発表をしている訳では無いが、我々には良く理解できる。

 10年、20万km以上使用しても、びくともしない品質。超低公害のハイブリッドか−、新型燃料電池搭載車と新技術に対するアプローチ、グループ企業全ての財務内容、明らかに目標は世界NO1への挑戦準備。

 中小企業は絶対に価格競争や規模拡大競争、そして品揃え競争に巻き込まれてはならない。中小企業の競争種目は品質、技術、企業内容、の三種目であることを、忘れない事である。

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